旧暦6月の別称に、「林鐘(りんしょう)」があります
中国音楽の十二律をあてたもの
俳句季語よみかた辞典には、「林鐘」を訓読みの「林の鐘」として、季語に掲載していますが 1)
「林の鐘」となると、林の中にある鐘と普通は認識してしまいます
謡曲「三井寺」では「林鐘」を「林の鐘」として使っています
「言葉の林のかねてきく名も高砂の尾上の鐘」
ただ、これは尾上の鐘にかけるため、わざと林の鐘(旧暦6月)とした表現方法の一つです
このような意図を持たず、ただ「林の鐘」と書いても、それは「林の中にある鐘」という意味になるでしょう
「林鐘」を「林の鐘」として使う人は昔からいたようです
滑稽雜談では「林鐘を林の鐘と連歌にもする人がいる。大きな誤りだ。」と書いています 2)
「入梅」を「入りの梅」とは書かないですし
「芒種」も「芒の種」とは書きません
「林鐘」も「林の鐘」とは書かないほうが良いと思います
1) 日外アソシエーツ.(2015).俳句季語よみかた辞典.日外アソシエーツ.
2) Shijidō, K. (1917). 滑稽雜談. 日本: 國書刋行會.