俳句の比喩とは?初心者でも分かるように解説!

俳句で使われる比喩について、以下の記事をかいています

そもそも比喩ってなに?

比喩を辞書で調べてみると、次のように書かれています

「説明や記述をわかりやすくし、類似した例形容で表現すること」

類似した例で表現」は、次のようなものです
銀行は国の心臓のようなものだ、なぜなら・・・
というように、銀行を知らない人に別のものを提示して分かりやすく説明します

形容で表現」は、次のようなものです
あの先生はゴリラのようだ
この雨は涙のようだ

というように、別のものに形容して分かりやすく説明します

どちらにしても、相手に分かりやすく伝えるために使われます

では、実際に俳句ではどのように使われるのでしょうか。

俳句の比喩と例句(直喩)

俳句で使われる比喩は、先ほどの「形容で表現」するものが多くみられます。
「○○のようだ、○○みたいだ」という表現です。
(※実際の俳句は昔の言葉が使われるので、「○○のごとし、○○のやうに、似て、たとえば、ほど、ばかり、めき」などの言葉でとなります)
比喩の名前は、直喩(明喩)とも呼びます。

実際の俳句を見てみましょう

身をよぢる如(ごと)くに束ねられ紫苑
(シオン(花)が身をよじるように束ねられている)

冬浜に浪のかけらのごとき
(冬の浜辺に波のかけらのように貝が落ちている)


直喩(明喩)に似た比喩として、隠喩(暗喩)と呼ばれるものがあります。
こちらも紹介します。

俳句の比喩と例句(隠喩)


隠喩(暗喩)は「○○のようだ、○○みたいだ」などの言葉を省略し、「AはB」だと断定します。

実際の俳句を見ます

冬晴れの微塵となりし母の愚痴
(母の愚痴が冬晴れの塵となった)

春水にあばたの鐘を撞き鳴らす
(春の水に向けて、あばたの鐘を鳴らし続けた)
※鉄の鐘を、あばた(痘瘡(とうそう)が治ったあとの皮膚)の鐘と言っています


直喩と隠喩の俳句を比べました。
直喩は説明的な感じを受けるのに対し、隠喩は創造的といえるのではないでしょうか。

「直喩(明喩)、隠喩(暗喩)」の説明と、例句を見てきましたが
次は、この比喩を俳句で使うときの注意点を説明します

直喩を俳句で使うときの注意点

直喩(明喩)を使うときの注意点
直喩は、ともすると説明的な句になってしまうことがあります
俳句は詩であり、説明ではありませんので、直喩を使うときには”説明的になっていないか”気を付けなければいけません

また、直喩は大抵誰もが思うようなことばかりを言ってしまいがちです
雨であれば、「涙のような雨」
虹であれば、「橋のような虹」
雲であれば、「綿飴のような雲」
このような比喩を使ったところで、読者は共感も感動もしません

直喩は、誰も言ったことのない、初めての例えを出し、皆が「なるほど」と思わなければいけません
誰も言ったことのない、初めての比喩ということですから、皆が納得するかというと、それは考えただけで困難なことが分かりますよね
直喩を使った句の成功確率は1/100とも言われるほど、ハードルが高いとされます

隠喩を俳句で使うときの注意点

隠喩(暗喩)を使うときの注意
隠喩の特徴である、「AはB」という断定ですが、余りにも離れすぎた例えを使うと、読者に意味が伝わらないばかりか、一句の品位を落とすことにも繋がります
読者が共感し、想像力を刺激してくれる隠喩を作ることが重要となります
こちらもやはり、ハードルの高い表現方法です

俳句で比喩は使わないほうがいい?

ここまでの説明を聞くと、俳句では比喩を使わない方がいいのかな?と思ってしまいますが、そんなことはありません
比喩を使った素晴らしい俳句は沢山あります
比喩の俳句が成功すると、読者に対してとても強い印象を与えることができます
難しくて、皆が手を出さない表現方法ではありますが、それ故に新境地が眠っているのではないでしょうか
果敢に挑戦して、他の人には作ることのできない、あなただけの比喩俳句を目指すことも良いかもしれません
有名な俳人では、与謝蕪村や山口誓子などが、比喩の俳句を沢山作っています
比喩の俳句を作ってみたい、という人は、2人の句集で勉強するといいでしょう

俳句の比喩を嫌う人もいる

俳人の中には、俳句の比喩表現を嫌う人もいます

俳句に比喩は合わない
比喩を使うと説明的になる
比喩は結局、主観にすぎないから
頭の中で機知的に考えたように見えるから


などの理由をよく聞きます

物を見たまま俳句にする「写生派」と呼ばれる俳人も、比喩はあまり使用しません
見たままをそのまま句にするのですから、当然と言えば当然です
ただ、このような人たちが周りにいても、あなたが使いたいと思ったのでしたら、臆せずどんどん使いましょう
人の考えや意見を第一にして、あなたは俳句を作る訳ではないはずです
まず、あなたが作りたいと思う俳句を大切にした方がよいと感じます

比喩の俳句の作り方

人が思いつかない比喩を簡単に作ることは出来るでしょうか?
これは難しいのですが、一つの方法として
例えば「雲」の比喩を作るときに、まずは雲から連想される単語を5つ挙げます
次に、今あげた単語から連想される単語をそれぞれ5つ挙げます
合計25個の単語が出ます
その中から一番「新鮮で比喩になりそうな単語を選ぶ」という方法があります
雲から連想される最初の5つの単語は、誰もが思いつく単語になる可能性があります
その単語から連想される単語は、雲に近くも遠くもない単語になることが多いので
当たり前でなく、まったく理解されないでもない、ちょうどよい比喩が生まれやすいと言えます
25個も考えられない、という人は、こちらの「連想類語辞典」サイトを使ってみてはどうでしょうか?

連想語が一瞬にして表示されますので、その単語の中から、一番良いものをピックアップしても良いかもしれません

「連想類語辞典」
https://renso-ruigo.com/

さまざまな比喩表現が紹介された本

こちらの本は、これまでの多くの作家の比喩の使い方を、実例で紹介されています。
自分一人では想像できなかった表現が載っているため、俳句作りの表現の幅が大きく広がります。

最後に

俳句で比喩を使うと、思わぬ意外性や、飛躍に富んだ面白い句が生まれます
比喩に対する批判的な意見はありますが
俳句の世界から比喩が消えたら、俳句はつまらなくなると思います
比喩の成功率は低いですが、あなたが果敢に挑戦して
新しい風を俳句界に吹き込んでくれたら、とても嬉しく思います

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