俳句を詠む時、どんな言葉を選べば良いか悩んだことはありませんか?
言葉の選び方一つで、俳句の世界観は大きく変わります
「名詞・形容詞・形容動詞・副詞」といった品詞の違いを理解することで、言葉の選び方の幅が広がり、より豊かな表現が可能になります
この記事では、俳句を詠むためのヒントとして、「名詞・形容詞・形容動詞・副詞」の役割と使い方を解説します
名詞
名詞とは
名詞は、「谷」「日本」「母」のように、物事の名称をあらわすもので、文書にはなくてはならない言葉です。
名詞は単独で意味を持ち、文の中で主語になることができます
例文から名詞を見る
「携帯電話が発売された」という文であれば
「携帯電話」が名詞です
「このジュースは美味しい」という文であれば
「ジュース」が名詞です
名詞の特徴と例句
名詞には5つの特徴があります
① 主語 になる ② 述語 になる ③ 独立語 になる ④ 連用修飾語 になる ⑤ 連体修飾語 になる |
これらの特徴について、それぞれの意味と例句を紹介します
例句を通して、名詞がどのように俳句の中で使われているのかが、より深く理解できるでしょう
① 主語 になる 名詞は「は」「が」「も」などの助詞をともなって、主語になります 春風は 北海道へ 向かうかな |
② 述語 になる 名詞は「だ」「です」などの助動詞や、「か」などの助詞をともなって述語になります ここは寺だ あれはスカイツリーです といったものです 「・・・だ」は、古語では「なり」ですので、俳句では「〇〇なり」という形で使われています 待合に 木の影をふむ 小暑なり |
③ 独立語 になる 名詞は、提示や呼びかけの独立語になります 呼びかけの場合、「や」「よ」などの助詞を伴うことがあります 朝顔の おおむね青と なり朝よ |
④ 連用修飾語 になる 名詞は「に」「を」「へ」「と」「で」「から」「より」などの助詞をともなって、連用修飾語になります 連用修飾語とは、用言(動詞、形容詞、形容動詞)文節を修飾する文節です 「ミカンを食べる」であれば、「ミカン」が連用修飾語です 夕焼を 浴びるよう 腕ひろげ |
⑤ 連体修飾語 になる 名詞は「の」「に」「を」などの助詞をともなって、連体修飾語になります 連体修飾語とは、体言(名詞)文節を修飾する文節です 「家に犬がいる」であれば、「家」が連体修飾語です 東京に 色を付けむと 四葩咲く |
形容詞
形容詞とは
「おもしろい本」「白い紙」のように、性質や状態などの意味をくわしく説明します
自立語で活用がある用言(動詞,形容詞,形容動詞の総称)で、言い切りの形が「い」で終わるという特徴があります
「おもしろい本だったよ」「難しい本だったよ」などの例では
形容詞を使うことで本の特徴を詳しく説明することができます
このように本(名詞)がどんな様子かをあらわすのが形容詞です
形容詞の一覧
美しい、優しい、賢い、虚しい、怖い、痛い、悲しい、美味しい
醜い、悔しい、可愛い、大きい、長い、若い、赤い、深い、遠い
暗い、薄い、古い、太い、新しい、明るい
などです
「い」で終わる単語が多い、という特徴があります
形容詞を使った俳句
形容詞を使った俳句です
美しい から儚くて 春の雪
俳句では形容詞を使うと失敗する、ということがよく言われます
これは、形容詞を「作者の感情を表す言葉」として使った場合です
例えば、「桜が美しい」などがそうです
「桜が美しい」「桜がきれい」といくら作者の感情を言っても、それは作者の感情の報告であって、読者は感動しません
ですので、作者の感情を表す形容詞を使うのであれば、五感を刺激する言葉を使ったほうが良いと言われます
「美しい」ではなく、「輝いている」「鮮やか」のように、視覚的なイメージを伝える言葉を使うことで、より具体的な情景が浮かび上がります
×「桜が美しい」
〇「桜の花びらが、きらめきながら降っている」
では、形容詞がすべてダメなのか?というと、そういうわけではありません
形容詞は物の性質や状態を詳しく説明する特徴があり
そのようにして使う形容詞は問題がありません
先ほどの俳句を見てみましょう
美しい から儚くて 春の雪
この俳句の「美しい」「儚い」は、雪の性質を詳しく説明するために使われています
雪の性質というのは「儚く消えやすいのだ」と言っているのです
そして、「儚く消えやすい」のは、雪が「美しい」という特徴を持っているからだ、と言っています
この俳句で使われている形容詞は、作者の感情ではありません
先輩から、「形容詞は使わないほうが良い」と言われたことのある人は多いと思います
しかし、歳時記の中には形容詞を使った俳句が載っています
そうなると「俳句で形容詞を使っているけれど、なぜ?」と困惑してしまいます
形容詞を使った俳句で許されるのは、形容詞が作者の感情ではなく、物の性質や状態を詳しくするために使われている場合です
このことを知っていると、自信をもって形容詞を使うことができます
形容動詞
形容動詞とは
「花がきれいだ」「とても静かだ」のように、物事の性質や状態を説明します
言い切りの形が「だ」で終わる語です
形容動詞は自立語(それだけで意味が通じる語)で活用(語尾の形が変わる)があることが特徴です
「昔はここに立派な家が建っていた」「携帯電話はとても便利だ」のように
家や携帯電話の状態を説明するのが形容動詞です
形容動詞は、名詞の前に置かれると「〜な」という形になるという特徴もあります
形容動詞の一覧
きれいだ、上品だ、しあわせだ、しずかだ、なめらかだ、のどかだ
便利だ、満足だ、にぎやかだ、積極的だ、専門的だ
形容動詞を使った俳句
形容動詞を使った俳句です
一輪に して紅梅の 寡黙なり
形容動詞は、言い切りの形が「だ」で終わる語でしたが、この「だ」の古語が「なり」です
形容動詞も、形容詞と同じように、作者の感情表現としては使わないほうが良いでしょう
詠もうとしている物事の、性質や状態を説明するために使います
副詞
副詞とは
品詞の一つで、用言(動詞・形容動詞・形容詞)を修飾(くわしく説明)します
ゆっくり歩く
だいぶ歩く
おそらく歩く
赤文字の部分が副詞です
副詞の特徴
①活用しない
動詞や形容動詞は「動く・動かない・動きます」などのように後ろにくる言葉によって形が変わりますが(これを活用すると言います)
副詞は変わらず、「とても」は「とても」のままです(これを活用しないと言います)
②連用修飾語です
用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾する語を連用修飾語
体言(名詞)を修飾する語を連体修飾語と言います
副詞は「連体修飾語」です
③自立語
それだけで意味が分かる言葉(自立語)です
それだけで意味が分からない言葉(付属語)には、助詞・助動詞があります
副詞の一覧
もうすこし、まっすぐ、とくに、まず、なかなか、ぜひ、いちども、だんだん、もうすぐ、なんかいも、よかったら、たぶん、きっと、
副詞を使った俳句
副詞を使った俳句です
鴨たちの もうすぐ帰る鴨となり
副詞を上手く使うことで、伝えたい内容を明確にしたり、表現を豊かにしたりする効果があります
最後に
「名詞・形容詞・形容動詞・副詞」の違いや例句を紹介してきました
俳句を鑑賞するときに、「この単語の品詞は○○だな」と理解することで、俳句の構造の理解が深まり、それが今後の俳句作りに役立つはずです
俳句作りにお勧めの本
俳句作りで文法の基礎を勉強するのに、おすすめの本です
基礎をしっかりと学べるので、間違った言葉の使い方がなくなりますし
表現したい言葉を、古語に直して使えるようになります