簡単に「俳句で情景を詠む」方法を紹介!

俳句をやっていると、先生や先輩から「もう少し、情景のある俳句を作ったほうが良いよ」とアドバイスを受けることがあります

そのたびに、「情景のある俳句って何?」と思ってしまう人もいるのではないでしょうか

情景という言葉は、日常会話でも比較的よく使う言葉でありますが、具体的にどのようなことをいうのか説明しようとすると難しいものです

この記事では、「情景」の意味を正しく理解して、「情景のある俳句」を作れるポイントを紹介します

「情景」とは?

「情景」を辞書で調べると、次のように書いています

心にある感じを起こさせる光景や場面

デジタル大辞泉,小学館,(参照2024/7/8).


つまり、「心に感情(喜怒哀楽)を起こさせる光景や場面」ということです
「心に寂しさを起こさせる光景」だったり、「心にワクワクを起こさせる光景」といったものです

「感を起こさせる光」だから、「情景」といいます

「情景の俳句」とは?

「情景」は「感情を起こさせる光景」と説明しました
そうなると、「情景の俳句」は、「作者に何らかの感情(寂しさだったり嬉しさだったり)を起こさせる光景」を俳句にするということです

例えば、「日本を離れる幼馴染みと最後のお別れをした」といった場面
寂しさを感じますよね
こういう場面を俳句にするのが、「情景の俳句」です
「情景句」とも言います

俳句で情景を詠む方法

情景句を詠む方法を2つ紹介します

1.感情を起こさせた光景を12音で書いて、5音の季語を合わせる
2.感情を含む場面を作って、季語と合わせる

1.感情を起こさせた光景を12音で書いて、5音の季語を合わせる

「日本を離れる幼馴染みと最後のお別れをした」という場面は情景だといいました
これを使って俳句を作ってみましょう
まず、感情を起こさせた光景を12音で作ります
12音は、575の「5音+7音」か、「7音+5音」です


5音+7音は、こんな感じになりました

国を去る 友との別れ

5音+7音で作ったので、5音の季語を最後に置けば575の俳句になります

国を去る 友との別れ 夏の昼

このようになります


ちなみに、7音+5音で作った例も書いておきます

国去る友と 別れけり

7音+5音になっていますね
この場合は、季語の5音を最初に置いて、575にします

夏の昼 国去る友と 別れけり


感情を起こさせた光景や場面があれば、それをまず5音+7音、もしくは7音+5音の12音の文章にしましょう
それさえできれば、あとは5音の季語をつければいいだけです


「友人との別れ」を題材に俳句を作りましたが
「友人との別れ」といった感情を起こさせる光景がなくても、寂しく感じることはあります
例えば、夕焼けを見て寂しく感じた、などがそうです
そういうときに、どうすればよいのかについて紹介します

2.感情を含む場面を作って、季語と合わせる

「友人との別れ」といった、大きな出来事がなくても
夕焼けを見て寂しさを感じたのでしたら、必ずそのときに、「寂しさを感じた理由」があるはずです
まず、それを探します

なぜあるはずだと断言できるのかというと
夕焼けを見て、毎回「寂しい」と感じるわけではないからです
「美しい」と感じることもあります
ということは、そのときに「寂しさ」を感じさせる別の何かがあるはずなのです
「美しさ」を感じさせる別の何かがあるはずなのです
それを見つけます

例えば
一人きりで夕焼けを見ていたから寂しく感じた
ふと郷愁にかられたから
河原で、誰も声もしなかったから
などいろいろあると思います、
夕焼けを見て寂しく感じた理由を5つ出してみましょう
あまり考えすぎずに、ぱっと思いついた言葉(単語だけでもいいです)を書き出しましょう


次の言葉がでました

一人きり
物思いにふける
郷愁
人声がない



理由が5つでたら、それぞれの言葉から連想する語を、5つずつあげます

このようになりました

一人きりこどく
河原
読書

喫茶店
物思いにふけるペン
立て肘
窓辺

木の下
郷愁故郷
実家
誰もいない実家
町の名はない
異国
別れ
もう会えない人
頬を伝う
ハンカチで拭う
むせび泣く
人声がない静寂
小さな部屋
一人の部屋
今日一人になる
笑い声のなくなった家

合計30個の言葉が出ました
寂しさを感じさせた理由5つと、それに近い言葉が25個です
言葉の中に「寂しさ」という言葉は入っていませんが、これが「寂しさを感じさせる場面」になります

ためしに、「夕焼け」と、この「寂しさを感じさせる場面」の言葉と合わせてみます
すると、不思議と「寂しさ」が浮かびます

例えば
夕焼け 机に置かれたペン
夕焼け 立て肘をつく女性
夕焼け 誰もいなくなった実家

どれも、「どのように寂しい」だとか、具体的に寂しい様子は何も書いていません
それでも、「夕焼け」と「寂しさを感じさせる場面」を合わせることで、何か寂しさを感じさせます

ほとんど意味を持たない言葉の掛け合わせで、なぜ感情を感じさせるのかについては、こちらで記事にしています 
「二物取り合わせはカット割り」>>>

ここまでできたら、あとは575に整えれば、寂しさを感じさせる俳句、つまり情景のある俳句になります

夕焼けや 机の上に 父のペン
夕焼けに 立て肘をつく 女かな
夕焼けの 誰も帰らぬ 実家かな 

このように作ることで、夕焼けに感じた寂しさを、俳句の中に忍ばせることができます

連想語を上げる理由

最初にわたしは、寂しく感じた理由を5つあげました

一人きり
物思いにふける
郷愁
声がない

この5つの言葉から連想する言葉を、さらにそれぞれ5つあげました
その理由は、最初に出した5つの言葉は、「寂しい」という感情が強すぎる言葉だからです
5つの言葉のどれも「寂しそう」ですよね
これで俳句を作っても、あからさまに「寂しさ」を伝えようとしている俳句になりかねません
5つの言葉から連想語をあげることで、「寂しい」という感情に近すぎず、遠すぎない、ちょうどよい言葉で俳句を作ることができます

連想を助けてくれるサイト

「寂しい」の連想語を考えても思いつかない場合は、下のサイトで連想言葉を調べることができます
表示された言葉を、句の中に入れることで、寂しさの漂う俳句にすることができます

「連想類語辞典: 日本語シソーラス」

「情景」と間違えやすい言葉

情景に似た言葉に「景色、風景」があります

▶︎「景色(けしき)」・・・山・川・海などの自然なおもむき、ながめ、風景
▶︎「風景(ふうけい)」・・・見ていたい目の前に広がる人・町・自然のながめ。その場のようす

「景色、風景」をそのまま詠む俳句を、写生句と言います

写生句と情景句の違い

俳句の基本とされる「写生句」は、景色をありのままに詠むことを言います
「情景句」は、感情を起こさせる光景を詠むことを言います

作品としてまったく別のものです

ここはしっかりと確認をしておきましょう

写生句と情景句はどっちがいいか

写生句と情景句のどちらが良い悪いというものはありません
好みの問題になります

写生句は見たままを詠みます、そうすると写真や絵画などには、絶対に文字では勝てません
それでも写生句があるのは、文字が脳に移動したときに写真や絵画では表すことのできない、動きや質感を想像させることができるからです
写生句にはその強みがあります

一方、情景句は、写真や絵画では表現できない儚さや寂しさといった感情を、読者の頭に想起させることができる、という強みがあります


「写生句」と「情景句」は別物で、それぞれにメリットやデメリットはあります
そのことを意識して、詠むものによって使い分けるとよいかもしれません

さいごに

情景句は、「感情を起こさせる光景」を俳句にしたものです

「寂しい」と心にわいた感情を、たんに「寂しい」といっても、それは作者の感想であって、読者は何も感じません

「寂しい夕焼け」といっても、「どんな夕焼け?」と思ってしまいます

「寂しさを起こさせる光景」を詠むことで、読者は追体験をして同じように寂しさを感じます


これが、先輩たちが「情景のある俳句を作ったほうが良いよ」とアドバイスする理由です

俳句作りの参考になれば幸いです

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