「夜寒」という季語があります
晩秋に感じられる夜の寒さを表す言葉です
この関連季語として「夜寒さ」を紹介している本があるのですが 1.2.3)
「夜寒さ」の「さ」の使い方は正しいのでしょうか?
俳句や文章の中でも、このように「夜寒さ」は使われています
夜寒さの樽天王の勢ひ哉 正岡子規 夜寒さのひとり笑ひに声が出て 岡本眸 春と言へどうら幼く未だ夜寒さへ薄らがざる 4) 夜寒さにというのは夜を寒むみというようなもの 5) |
確かにこのようには使われているのですが
接尾の「さ」は、次のように形容詞・形容動詞の語幹に付いて名詞となったものです
「寒い」の語幹に「さ」がついて、「寒さ」という名詞になる 「寂しい」の語幹に「さ」がついて、「寂しさ」という名詞になる 「白い」の語幹に「さ」がついて、「白さ」という名詞になる 名詞である「夜寒」に「さ」が付くのかな?と思うのです |
そうなると、もともと名詞の「夜寒」に「さ」が付くのか、が分からないのです
「朝寒、梅雨寒、秋寒、うそ寒」といった名詞に「さ」が付いた言葉は見当たりません
「夜寒さ」に似た使い方で、「肌寒さ」「底寒さ」という言葉があります
これは
「肌寒い」という形容詞に「さ」が付いて名詞になったもの
「底寒い」という形容詞に「さ」が付いて名詞になったもの
「夜寒い」という形容詞があれば同じように活用して「夜寒さ」となるのだと思いますが
「夜寒い」という形容詞はありません
各種辞書・辞典にも「夜寒さ」という言葉は見つかりません
ただ、俳句や文章の中で使われているのは確かです
使い方が正しいのか間違っているのか、わたしは分かりません
なんとなく違和感を覚えたので、記事にしただけです
「夜寒さ(よさむさ)」を季語として使う場合
念のため、使い方が正しいのかを確認されたほうが良いと感じます
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1)
角川書店.(2022).新版角川俳句大歳時記.KADOKAWA.
2)
日外アソシエーツ.(2015).俳句季語よみかた辞典.日外アソシエーツ.
3)
辻桃子.安部元気. (2017). いちばんわかりやすい俳句歳時記秋冬新年. 日本: 主婦の友社.
4)
牛山鶴堂 (良助) 著.(明20.5).日本新世界.成文堂.
5)
哲学館第八学年度正科講義録 〔4〕.(不明).哲学館.