俳句の「拗音・促音・長音」について

文語文法

俳句を詠むとき、「拗音」「促音」「長音」ってどう数えるの?と悩んだことはありませんか?
これらを正しく理解することで、あなたの俳句はぐっと深みを増します
この記事では、「拗音・促音・長音」の読み方、音数の数え方、俳句での表記方法などをわかりやすく解説します
記事を読んで、俳句の世界をもっと深く探求しましょう!


拗音・促音・長音の読み方

「拗音・促音・長音」は、それぞれ次のように読みます

拗音(ようおん)
促音(そくおん)
長音(ちょうおん)

拗音・促音・長音とは

拗音「きゃ・きゅ・きょ」などのように、他の言葉の横に記す小さな「ゃ・ゅ・ょ」のこと
促音「かっ・きっ・くっ」などのように、他の言葉の横に記す小さな「っ」のこと
長音「かー・きー・くー」などのように、言葉の横に記す横棒「ー」のこと


拗音・促音・長音の数え方

拗音の「きゃ」「きゅ」「きょ」などは、俳句では1音として数えます
つまり、小文字の「ゃ・ゅ・ょ」は音数に数えません

促音の「かっ」「きっ」「くっ」などは、俳句では2音として数えます
つまり、小文字の「っ」は1音として数えます

長音の「かー」「きー」「くー」などは、俳句では2音として数えます
つまり、横棒の「ー」は1音として数えます

表にすると次のようになります

拗音「きゃ」「きゅ」「きょ」←1音で数える
促音「かっ」「きっ」「くっ」←2音で数える
長音「かー」「きー」「くー」←2音で数える 

俳句の音数の数え方はこちらでも記事にしています >>>

俳句での拗音・促音の書き方

俳句では拗音・促音を書くとき、カタカナは小文字で、平仮名は大文字で表記することが多く見られます
次のような感じですね

カタカナの拗音は小文字ンドル
カタカナの促音は小文字トカ
平仮名の拗音は大文字うかし(教科書)
平仮名の促音は大文字か(立夏)

平仮名で拗音・促音を書くとき、大文字で書かなければいけないというルールはありませんが、多くの俳人が大文字で書いているため、みなそれに倣って大文字で書いています
わたしは、大文字表記だと読者が見ずらいので(わたし自身も見ずらいので)小文字で表記しています

拗音・促音のカタカナは小文字で、平仮名は大文字表記の理由はなぜ?

拗音(ゃ・ゅ・ょ)・促音(っ)などは、室町時代末期から発音としてはありましたが、「小文字」での表記方法がなかったため、大文字で「や・ゆ・よ・つ」と書いていました
このころは、どのように拗音・促音を表記すればよいのか試行錯誤していた段階でした
鎌倉時代に入ると、拗音・促音を小文字で表記する方法が少しずつ見られるようになってきました
昭和初期に、昔の仮名遣いが新しい仮名遣いに変わったのですが、このとき、外来語や地名などはカタカナで書きましょう。そして、発音を間違わないように、なるべく拗音・促音は小文字で表記しましょう、というルールのようなものができました
このルールと一緒に、平仮名の拗音・促音も小文字で表記できればよかったのですが、公文書の中には大文字で書かれている拗音・促音があったため、すぐにはできませんでした
古い法律文章は大文字、新しい法律文章は小文字、というように、大文字と小文字が混ざってしまうからです
結局、ひらがなの拗音・促音を小文字で書くことができるようになったのは、平成に入ってからです

このような経緯が、どういうわけか、昔のカタカナは拗音・促音を小文字で書いていて、平仮名は大文字で書いていた、という話となり、いまでも俳句を作るときは、カタカナの拗音・促音は小文字でよいけれど、平仮名の拗音・促音は大文字で書かなければいけない、という話になっています



拗音・促音を大文字で書くと、音数はどうなるの?


「きょうかしょ(教科書)」の拗音を大文字で「きうかし(教科書)」と書いても、音数は4音です。6音ではありません
発音した時の音数で数えます



大文字表記の拗音・促音を読むコツ

読者の立場からすると、拗音・促音が大文字で書かれがていると読みずらいものです

「きようかしよ(教科書)」「ちようちん(提灯)」「きやくま(客間)」
どれも読みずらいですね

俳句の中で「や・ゆ・よ」が出てきて、「あれ?これはどうやって読むんだ」と思ったら
それは小文字の「ゃ・ゅ・ょ」の可能性があります
「ゃ・ゅ・ょ」が使われるとき、「ゃ・ゅ・ょ」の前に付く文字は全て、母音が「イ」です
(きゃ、きゅ、きょ、しゃ、しゅ、しょ、ちゃ、ちゅ、ちょ・・・など、どれも母音が「イ」ですよね)
母音が「イ」の文字の後に「や・ゆ・よ」が続く場合、「ゃ・ゅ・ょ」かもしれない、と覚えておきましょう
「っ」は「ん」以外には全て付き付きます

拗音・促音を使った俳句

あたたかや木のおもち屋に一人いて   石橋芙美

あちこちにひとりぽちが盆供養   髙橋悦子


拗音・促音を使った俳句には、このようなものがあります
ちなみに、拗音・促音を大文字で書くと、次のようになります

あたたかや木のおもち屋に一人いて   

石橋芙美あちこちにひとりぽちが盆供養   髙橋悦子




拗音・促音は大文字で表記するべき?

拗音や促音を大文字で書くべきか小文字で書くべきか、一度は考えたことがあるかもしれません
私自身は、拗音や促音を小文字で表記しています。小文字で書いても大文字で書いても、単語の意味が変わることはないためです
また、何よりも、読み手にとって読みにくい表記をあえて選ぶ必要があるのか、私には分からないからです



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俳句作りにお勧めの本

俳句作りで文法の基礎を勉強するのに、おすすめの本です
基礎をしっかりと学べるので、間違った言葉の使い方がなくなりますし
表現したい言葉を、古語に直して使えるようになります



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